葉月

ストーリー修行用ブログ

【第11回短編小説の集い】 夏の幻

 こんにちは。葉月です。

前回はバタバタしていて書けませんでした。。。「旅」というおもしろいテーマだったのに。。。

今回は祭りということで、楽しい話を書くつもりが逆方向に。。。あら。。。

読んでいただければ幸いです。

 

novelcluster.hatenablog.jp

 

夏の幻

えいやーああー
力強い声が響く。
今日は町の盆踊りだ。
中学1年生の草太は、友達の敦(あつし)と誠(まこと)と一緒に盆踊りに参加していた。
もちろんお目当ては踊りではなく、屋台だが。


「なぁなぁ、次は金魚すくいしようぜ!」
リーダー格の敦が2人に声をかける。
「うん、いいよ。」
敦や誠に比べて草太はおとなしい少年である。いつも敦や誠のいいなりだ。
「よし、一番すくえなかったやつがジュースおごりな!」
こうして、金魚すくい対決がはじまる。
草太は、ポイをあまり濡らさないように慎重に金魚を追いかけた。
「さぁ、乗れ!」
一瞬金魚がポイの上に乗ったが、金魚が暴れてすぐにポイは破れてしまった。
「あー、僕の負けか、、、」
敦と誠はちゃんと金魚をすくえている上に、まだポイも破れそうにない。

(つまんないなー…)

草太は敦と誠の金魚すくいを見るのをやめ、立ち上がって踊っている人達を眺めた。

えいやーああー
(ん?)
踊っている集団の中で、草太の目にとまったのは、きつねのお面をかぶったおかっぱ頭で、金魚柄の浴衣を着た小さな女の子だった。
(小学校中学年ぐらいかな?)
と草太は思った。
きつねのお面の女の子は周りの大人子供に混じって上手に踊っている。その姿をみているとなんだか頭がぼんやりしてきた。

「あなた、わたしがみえるの?」
その声に草太ははっと我に返った。
気が付くときつねのお面の女の子は目の前にいた。
「え、みえるよ、みえるの?って、どういうこと?」

草太はおどおどしながら聞きかえす。
すると女の子は、背中を向けて、
こっちへきて。
と言った。

草太は女の子に言われるままについていった。
盆踊りの会場の運動場を出て、近くの竹林へ入っていく。

「ねぇ、こんなところに入ったら危ないよ。暗いし、戻ろうよ。」
草太は怖くなって女の子にそういうが、女の子は無言で竹林の奥へ入っていく。
「ねぇ、戻ろうったら…」
そう言うも、一人で戻るのが怖くて結局女の子へついていくしかないのだ。

5分ほど歩いただろうか、小さな池に辿り着いた。
「こんなところに池があったんだ…どうして僕をここへ連れてきたの?」
「わたし、ここでしんじゃったの。おかあさんにおこられて、いえでして、竹林のなかに入ったら、池に落ちちゃったの。でも、だれも気づいてくれないの。だから、盆踊りに参加して、わたしをみつけてくれるひとをさがしていたの――――」

 

 

 

「おい!草太!なにぼーっとしてんだよ!」

敦の声に、草太ははっとした。

「俺7匹!誠5匹!草太0匹!草太がジュースおごりなー!!」

(あれ、僕は竹林にいたはずなのに・・・)

あまりにも退屈すぎて、妄想でもしていたのだろうか。

 

 

 

次の日、草太は昨夜のことが気になり、竹林の池に向かった。

池には、小さなきつねの死骸が浮かんでいた。

「あ・・・」

草太はすぐさま近くにあった木の枝で死骸を引き寄せた。

そして土の中に埋め、石を積んで小さな墓をつくった。

あのきつねのお面の女の子を思いながら、手を合わせた。

 

ありがとう――――

 

あの女の子の声が聞こえたような気がした。